クラゲのエッセイ第3集

「クラゲ楽 〜jfish ML エッセイ綴り その3

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 本エッセイ集は,クラゲについてのメーリング・リスト(jfish ML)への投稿エッセイを纏めたものです。jfish MLのメンバーは30名と少ないのですが,1999年1月中旬にこのMLは発足し,まだまだ日が浅いのですが,すでに千以上のメールが配信され,活発な活動が行われています。なお,メンバーはクラゲのプロアマと非常に多様です。

 そのようなML交信のなかで,気儘で無責任なリャッシー氏の提案により,クラゲエッセイ集の出版が計画されました。

 本エッセイ集には,先のエッセイ第1集と第2集に引き続き纏められたものです。宜しくご覧下さい。



101 墨を吐くクラゲ[jfish:3/15 10:15]  ドリメジュ(1999年3月15日)


軟体動物のイカやアメフラシが墨を吐くのは良く知られているが、
クラゲの墨はきは信じられない方も多いのではないか。クシクラゲ
にそんな芸達者なものがいる。ドリ−は2度そんな光景に出くわした。
イカの墨をみたことおありだろうか。南紀白浜には春から夏によく
アオリイカをみかけるが、かれらが直接墨を吐くところや吐かれた
墨を海岸で見れる。かれらの墨はダミ−で、黒いかたまりを影武者のよう
に出現させ、本体はあっというまに姿をくらますのだ。アメフラシの方は
逆に墨流し方式、サラ−とした紫の墨を煙幕のようにたれ流す。イカのように
すばやい行動は不能なかれらならではの目くらまし法だ。
で、われらがクラゲの墨はどうか、ドリ−がみたのは沖縄本島瀬底島
と日本最西端の与那国島の2個所で2種のクシクラゲである。最初の体験は
初めての出会いで、興奮を覚えた。報告例のなかった種であったので
学会誌に記録した。後者はすでに日本でも外国でも報告済みである。
いずれにしろしょっちゅうお目にはかかれないようで、あの驚きは忘れられない。
か弱きクシクラゲにソフトタッチするやいなや、シュワ−と吹き出すヨ−ドチンキ
色の煙、何度も繰り返し吹き出す。写真にもなんとかおさめた。成分や
その効力は未知だが、広い海の中でかれらも身を守るべく努力しているのだ。
透明な体から吹き出す色付きの煙、めくらましでもダミ−でもなく、それは
いやがらせのおどしの方式に違いない。


102 グル−プの偏り[jfish:3/18 8:41]   ドリメジュ(1999年3月18日)

種の定義を信じるも信じないも形態の多様性が厳として人間が
区別できているのは確かとすると、クラゲたちの分類に
大きな偏りがある。それは何か?強力な刺胞で、人も殺される
ので有名な箱虫綱(=立方水母綱)たちがマイナ−な存在であること。
世界でたった20種程度しか種分化していない。20でもこれを
多いとみることはちょっとまってもらう。箱虫綱にたいして、
親戚筋の2群では、鉢虫綱がその約10倍、ヒドロ虫綱だと
クラゲを遊離しないものを含めて100倍以上、まったく
クラゲ世代のない花虫綱でもゆうに200倍はこえる。
クラゲの機能はまさに有性生殖のためだから遺伝子の交換と
分散が有効にできればクラゲを多彩にするのは効果があるのだ。
それなら箱虫綱はこの生物としての基本的なことが弱いの
だろうか。
ここで進化を溯ってほしい。みんなもともとは
たったの1種だったのが正しいとすると、それが強力な
神のような存在で全能であればなんも進化してあれやこれやと
試行錯誤することもない。とすると花虫やヒドロはかよわき、
努力家なんかといとおしく、また姿形を変えて生き続けよう
とする逞しさがみえてくる。
そうだったんだ、箱虫たちはすぐれた存在だったのだ。
生きた化石だとか遺存種だとかレッテルを貼って、
太古から変わらない保守的な生物を人はあなどりがちだが
みかたをかえればまったく逆の立場となる。



103 続・グル−プの偏り[jfish:1508]   ドリメジュ(1999年3月18日)


何がまずもって偏っているかというと、刺胞動物の中の花虫綱の生き方だ。
もっともよく種分化したのは確かだが、クラゲの世代をまったくつくらなかった。
イソギンチャクやサンゴあるいはウミトサカやウミキノコでおなじみ
の分類群。単体で巨大になり、魚のクマノミさえ住まわせる
イソギンチャク類がいるとおもいきや、石のような骨格を形成し、
巨大群体となるイシサンゴ類。海の底に生きるものだ。
これらいわゆる花ポリプに比べて、微少極まりないのが、
箱虫綱のポリプ、自然界からはまずはみつからないだろう。
既知の例は少ないが、みな単体である。しかも、数少ない触手の先に
たった1個の刺胞を装填しただけの肉食動物。しかもクラゲになるときは
、おなじみの鉢虫綱のポリプのように体の一部をちゃんと残しておく芸当はしない。
つまり、”完全変態”。箱虫綱といえば、凄腕のクラゲと思ってはいけない。
ポリプという子供時代がなんともひよわいのだ。このため、花虫綱など
他のすべての仲間から進化に遅れをとったと考えられる。アキレス腱
はあるものだ。
ところで、進化はもともと矛盾から成り立っている。生き物は元来保守的で、
遺伝子さえも忠実に複製するのが常だ。人間の親子だって目に明らかなのは確か。
なのに同じ仲間でもなんで偏りをもつほど変化しないといけないのか。
同族あい争わぬとすれば、敵は予測もつかぬプレデ−タたち。クラゲもポリプも凄腕の
かれらといえど上には上がいる。化石に記録されなかった主人公も実は膨大かもしれぬ。

104 漂うことへの憧れ [jfish:1564]
   −クラゲへ,ある底棲生活者から−  リャストナイ(1999年3月20日)

人間は大気の底で生活している生活者です

ですから,鉛直的行動能力が低いんです
たとえば,10kmの水平距離は自力で到達できますが
10kmの高さまでジェットエンジンを利用してやっと行けるくらいです
ですから,人間は底生生活者と言って良いでしょう

しかし,水平的な生活行動範囲は広くはありません
自力ではせいぜい数10kmどまりです
昔,自動車などがない時代は隣の町まで出掛けるのが大変な出来事でした
地区や部落が川や山で隔てられ人の行き来は余りありませんでした
その時代,地域の中で充分に暮らしていけました
しかし,現代では情報が飛び交い,交通は行き届き,一見そのような垣根が取
り払われたようにみえますが,まだまだ人間の意識の中に地域の垣根は生きて
ます
鉛直方向だけでなく水平方向にも強く制限されているようです
やはり,人間は底生生活者です

くらげは浮遊生活者ですよね
水に浮かんで生活してます
クラゲには水平方向と鉛直方向の移動にそれ程の違いがないようです

クラゲを見て,ストレス解消するのはクラゲにそんな束縛がないからでしょう
 雲も似たようなものでしょうが,生き物ではないので親しみがちょっとない
ですよね

クラゲのように空にポッカリ浮かんでいたいですね
出来ることでしたらね


105 連句  [jfish:1553]              リャストナイ(1999年3月20)

月出でて クラゲが遊ぶ 凪の海

凪なれど 今宵は十二夜 潮を待つ

潮に住む クラゲの気持ち 未だ分からぬ

クラゲをば 人は昏気と 呼びにけり

クラゲをば 海に月と 誰か詠む

海に月 蟹は静かに 泡を吹く


106 クラゲとサル[jfish:1602]      ドリメジュ(1999年3月22日)

骨を抜かれた例の御伽噺に関わる話しをするのではない。この二つの分類群に
世界に広がった共通の性質があるのが常日頃不思議に思うドリ−。
海と陸での一生、まったく月とスッポンの姿形の相違があるのに両者は世界の覇者!

おとなしいサルたちは今や地域に閉じこもりがちだが、それに比べ
驚嘆すべきは人間の移動能力。原始人もびっくりの現代の粋を集めた
ジェット機使用能力はともかく、世界中で人が住んでいないところはない。
地上を分割して国家を形成し、大分け3品種が、
ご先祖様を同じくして分散してきた結果だ。そして仲間のサルたちを自分の国へ見世物に
引きずって来る。こうして仲間のサルたちは好むと好まざるを得ずして広がりゆく現代の
バイテクならもう自然の本来のすまいはわずらわしい。

これに対して、自身の移動能力はわずかだが、地球のさまざまな流れに乗り、
長大な時間をかけてクラゲも世界中に住む。クラゲのようにどこへいっても必ずや
存在する大型プランクトンはそうざらにはいない。海岸や港、
はたまた沖合いの外洋でプランクトンネットを引いてみるがいい。
それはそれはいろんなクラゲが取れている。もしとれないところがあったら、それは
ポリプに姿をかえて漂泳しているのだ。他の生き物の腹にはいっているのかもしれない。

クラゲとサル、存在様式も生き様もまったく違えど世界中に広がったツワモノ。
こんな強者の共存を許す地球のキャパシテイが他の覇者も含めて
限度を超えないといいのだが。今やサル人間の手の届かないところは希少。
食べ、排泄し、産み殖えてゆく各々のサイクルのネットワ−クがどっかで
プッツンしてドミノ効果が現れないように。


107 クラゲは眠るか?[jfish:0557] ドリメジュ(1999年2月16日)


自問自答、へたな考え休むに似たり、かもしれないが、まあ、ちょっと
眠たい方、眠くない方、お付き合いを願いたい。
結論からずばり述べる。クラゲに睡眠は必要ない。なぜなら、彼らには
脳がなく、記憶もないし、勿論、夢も見ない。浮遊性なので、海中で体の
重さを頑張って支える必要も無いので、疲れも知らない。夜も昼も活動を
しているはずだ。その活動は、餌取りであり、呼吸であり、排泄であり、
循環であり、生殖活動であり、長生きへ向かう筋肉運動なのだ。
ハチドリのように、四六時中、食餌せねばならない慌ただしさはなく、
流れのままに悠然とたゆとうのである。
まてよ、流れに乗っている時は
触手を縮め、傘を広げてパラシュ−ト型で休息しているが、この時は
眠れるチャンスか? でも、寝入ってしまったら流れがなくなった
のをどう感知するのだろう。あれれ、疑問が湧いてきた。回遊魚のように、
遊泳をゆっくりにして、泳ぎながら眠っているんじゃないか。とにかく、
人間のようには熟睡する必要に関しては、疲れを知らない体で、脳のないクラゲゆえ
身に付けていないだろう。ドリメジュのトレ−ドマ−ク、サカサクラゲが脳裏をかすめた。
彼らは普段は泳がないので、例外だからちょっと考えないでおこう。
クラゲに発信機をつけて、行動を調べる夢が浮かんだ。超小型の
精密機械をちょっとピアスにして、衛星で、クラゲ君の軌跡を追求しよう。



108 今朝の海は[jfish:4/6,9:48]     リャストナイ(1999年4月6日)


今朝の海は

 今朝の海はざわめいています
 暖かい南風が吹きつけ
 激しく小波がはしり
 大きなうねりまでも

 昨日見つけた大きなカミクラゲはいません
 ウリクラゲも,ミズクラゲも,みんないません
 こんな時は 海の底でじっとしているのでしょう
 小枝片が波にもまれて 生き物のように見えます

 今朝の海はざわめいています
 春の日に海面がきらきらと光ってます
 なんだか心落ち着かない海です
 クラゲ達も 他の生き物達もきっと落ち着かない気持ちでしょう



109 進化[jfish:4/11,6:15]       ドリメジュ(1999年4月11日)


昔からの習慣はときとして頭をもたげるもの。それも
多忙なときに多いのは、転位行動なのだろう。
「進化は変更だ」と当たり前のことを自分なりになぜか納得した。
多分、このところ実習でいろんな多様な海洋生物を次々とみて、
学生達とも、またちょうどその時に来所されておられた
寄生性コペポ−ダの系統分類学の第一人者のHo先生に
有益なお話を伺えたことが引き金になっている。
変わらない性格をもった生き物が変わってゆく、あてにならぬ
突然変異を持ち出さなくとも、たしかに有性生殖で誕生した
新しい発現がその可能性を試されている。

生き物たちに、”もうこれで完成だ”ということはない。恒に
変遷していく定めだ。

ところで、自分自身もずいぶん変わったゆくのに気づくのは
幸いなのか。地図さえない旅、これは人生だが、設計図は
傷めたことはないが、組み込まれたコメンザルアダムの
なせる業なのか?

ヒトゲノム計画の完了が待ち遠しい。クラゲゲノム計画は
何時の日か知れねども、早く来るはずだ。進化の謎を究明したいのは
人間のル−ツによせる想いが絶対にそうささざるを得なくなっている。
そのような行動は、実は既に組み込まれたものだから。

すべては御手の上の出来事。くらげのようになんもかも透き通そう。
でも反抗したい。深みにはまって黒い部分、そうベ−ル、
神秘のベ−ルははがしたくもはがされたくもない。



110
 マミズクラゲの観察ノート 1999年1月29日

                    リャストナイ・上野

 マミズクラゲの出現報告をします。1998年の夏から秋にかけての話です。下関市近くのダム湖とため池に結構沢山のマミズクラゲが出現しました。調べた30ほどのうち僅かに4つに出現したのですが,そのうちの2つは300mほどの距離をおいて隣り合っており,分布のつながりがあるかも知れません。しかし,これらの間には低い峠があり,水系が違っており,水の流れで運搬された結果ではないようです。運んだのは風でしょうか,鳥でしょうか。この答えは風の中のようです。

 なぜ,今頃マミズクラゲの話をする理由は全く個人的で今やらないと忘れてしますからです。皆さん,付き合って下さい。

 マミズクラゲといいますと,幻のクラゲのイメージがありますが,よくよく探すと身近に結構にいるものです。今年の夏は皆さん,チャレンジして下さい。飼育は数日しかできず,難しいようです。マミズクラゲがなぜ幻かといいますと,数日前にいたはずの池に再度発見できないことがあるからと思っております。神出鬼没と言われています。小さいですし,池の透明度も低いのも幻の原因でしょうが,人家に近い淡水に成育するのですから,本来はよく知られているべきクラゲのはずですが。また,非常に地味なクラゲで,このことからすると外敵が多い環境に成育しているのでしょう。

 なぜか纏まらない,マミズクラゲの話でした。

111 クラゲも時にはベジタリアン?  1999年1月31日

                        リャストナイ・上野

 皆さんは,クラゲは完全な動物食だと思っておられますよね。じつは,植物プランクトンを食べていることがあるし,多く食べる種がいることに最近気付きました。皆さんも,飼育中などに気を付けていて下さい。

 その一つは,ミズクラゲで胃から珪藻が検出されています(Matsakis & Conover; 1991)。また,北洋などで植物プランクトンが大量発生(ブルーミング形成)しますと,クラゲの胃中は殆ど珪藻となります(上野;未発表)。どちらも消化について確認されてません。

 クラゲも時には菜食するようですね。まさか,恋の季節と関係するとか。または健康のため?

重たくも軽いクラゲの話題提供でした。

 

112 インタ−ネットとクラゲ[jfish:4/18:9:42] ドリメジュ (1999年4月18日)

 

クラゲはネットでとるが、人間の心などををつかみとるネットもある。

それが今や全世界的規模で拡大中のご存知インタ−ネット、人の心の中への

インタ−どころか、ありとあらゆる以下の者たち、即ちパソコンと電話回線、

そして裕福なお金のある者たちへ、ほぼリアルタイムにて文字と

画像を中心とした(音声も直に)、錯綜とした会話が飛びかっている。

利潤追求、特ダネ、などなど生き死に関する重大情報を

取り扱う者は、おちおち夜も眠れまい。

これに対してまったく受け身的な流れ流れてのクラゲは、

インタ−ネットなんかでわれらクラゲはすくえへんでと微笑んで

たゆとっている。