クラゲエッセイにまとめてなかったエッセイ 


「海  −坂田明氏のCD「海」に接してー」    あん(1999.8.6)

  雨が最後に憩う海
  陸を洗い流した水が集う海
  汗も涙も集まる海
  生活廃水や工場廃水も流れ込む海
  猫の死骸が流れ着いた海

  幾千万の命を抱える海
  美しいサンゴや魚達の熱帯の海
  白く凍りついた海
  暗く静かに眠っているような深い海

  海は穏やかに受け入れ
  いつもと変わらぬ表情の海
  美しく透き通る海
  海よ 変わらないお前があるから 私はいられる
  海よ 大きな海よ
  いつまでも 畏れ多い海のままであってくれ



「中学校の顕微鏡 −私を研究に駆り出したものー」 あん(2000.8.27)

現在 私は何台かの顕微鏡に取り囲まれて仕事をしている
その中には 電子顕微鏡まである
クラゲの体の詳細を観察するには 顕微鏡は必要で
一日に必ず一度は顕微鏡を覗いている

さて 私が顕微鏡を覗くようになった動機は実に単純だった

中学校の理科の時間だった
何を観察したのかは記憶にない
タマネギの表皮だったような気もする
何を観察したかは問題ではなかった
理科の実験で使用された顕微鏡は一台だけだった
それに対して 40名以上の生徒がいた
先生が準備した試料を 順番に並んで 顕微鏡で観察した
私の番がきた
接眼レンズに目をあてて 片目で覗いた
何を観察したのかは記憶にない
私より前の級友と同様に 10秒間くらい観察した
もっと長く 納得がいくまで観察したかったが
先生が説明したものを 接眼レンズの奥底に確認して すぐに終了した
そこには 光り輝く別世界が存在していた

この時に 私は顕微鏡でいろんなものをよく観察したいと思った
納得するまで 長時間観察したいと思った

クラスに一台の中学校の顕微鏡
それも 旧式できっと安価な物だったろう
わずか10秒間位しか覗けなかった顕微鏡
これが私に押さえようのない欲求を起こさせた

これが 私が顕微鏡を用いた研究をする原点になったようだ
ほんの 10秒間ほど垣間見た輝く別世界が私を捉えて話さなかった

ここで 考えることがある
もし 中学校の理科の時間に一人一台の顕微鏡が割り当てられ
こころゆくまで 使用して観察できたとする
この時も 光り輝く別世界は私を魅了するだろうかと
高性能の顕微鏡を用意された学生実験で 必ずしも学生の目が輝いてない
のを見て そんなことを考えることがある



「食べてはいけない!」              ミヤカワさん(1999.9.8)


「買ってはいけない」私も古本屋に出てるのを立ち読みしました。この本買う
べからず、の逆説的なタイトルかと思って手に取ったのですが。いっしょにい
た妻は好物のクリームパンが駄目、と書いてあったのでショックを受けたよう
です。

うちは妻がアレルギー体質なので、食べ物にも洗剤にも気を使わざるをえない
のですけど、最近気になるのはシックハウス症候群というやつ。カビ、ダニは
もちろんのこと、建材や家具の接着剤から出るホルムアルデヒドが悪いとか。
これは逃げ場がないから恐いよ。去年の夏に引越ししたのですが、安くていい
物件に見えるのだけど、妻が一歩はいったとたんに頭痛を訴えた為断念した、
なんてこともありました。そうそう引越しが出来るほどお金持ちじゃないから
ね。

こっから残酷な話になっちゃうけど。

クラゲが室内のホルムアルデヒドを検出する「カナリア」として役に立ってく
れないかしら。サンゴなどの無脊椎動物では、水槽の近くでホルマリンのビン
を開けただけでみんな触手を引っ込めちゃう、なんてのを経験したことがあり
ます。クラゲではどうかな。

これ立証されると、面白いよ。
まずテレビコマーシャルがブームの火付け役になるの。
15秒CM。ミズクラゲの映像。BGMはもちろんチチ松村氏。
「クラゲは人体にも有害なホルムアルデヒドにとても敏感。でも○△×の家な
ら、リビングでクラゲが飼えます」
森本レオのナレーションで。いや、テロップだけの方がいいかな。
住宅展示場はもちろんクラゲの水槽置いてあって、子供向けにはクラゲの風船
やらぬいぐるみやら配って、毎週日曜日はクラゲの飼い方教室があるの。消費
者は自分の家でクラゲ飼ってみて、育たなかったら恐くなってみんな家建て替
える。日本中「クラゲが飼える家」の建築ブーム。そうするってえと、他の住
宅メーカーが悔しがって、より飼育が難しいクラゲに挑戦する。「うちなら、
カツオノエボシも飼えます」「エチゼンクラゲも育ちます」もう水族館みたい
になっちゃう。大資本を投入しての飼育競争になったら遊離直後のマミズクラ
ゲの飼育にもブレークスルーがあるかもしれないし、カミクラゲのポリプも大
手ゼネコンの威信を賭けた人海戦術でとうとう発見される。

誰か売り込みにいかない?
どっかの象が飼える家よりよっぽど現実的だと思うけど。



「クラゲの癒し」                  あん(1999.11.22)


 最近話題が多い「癒し」について,思うところを書いてみました。まず,この
言葉は,最近になってよく使われだした言葉のようですね。「心の傷を癒す」と
いう使い方がありますね。よく使われるようになったということは,心の傷を持
つ人が多いと言うことでしょうか。わたしは,また別にもあるように思ってます。
それは,「癒す」ということを堂々と人前で言える社会があるようです。心の傷
を認めてくれる傾向になったことも,確かに「癒し」という言葉が頻繁に使われ
だしたことと関係していると思ってます。
 「被害者の心のケア」も「癒し」を別の角度で言ったものでしょう。このよう
な配慮は重要です。人間は時にパッシング対象を設けて,自分の心の憂さを晴ら
すことがありますが,その対象が傷ついた弱い人がなりやすいものです。このよ
うな事を見てくると,癒しとは自分自身に出来て,初めて他人の癒しまで考えられ
るものと思えてきます。ですから,「癒し」は人間社会の平和には非常に重要な
役割をもっているということになります。
 クラゲは癒しの効果をもっているようですね。柔らかく,繰り返す動きは安心
感をもたらします。水に解けそうな透明な体は何の隠し事もないようです。裏切
りや狡猾さは感じられません。
 しかし,私はクラゲに対して「癒し」を殆ど求めていません。自然科学の対象
物として,その生命活動には強い関心をもってみています。そんな私が,クラゲ
の「癒し」に接して思うことは,人間は内面に非常なエネルギーを向けていると
いうことです。「癒し」を含めた人間社会内部の出来事の対応に,大変のエネル
ギーを使っていると事実をますますもって知らされています。どちらかというと,
エネルギーの負の方向での使用です。正の方向に今まで少しでも多く向けられて
いたらば,自然科学の知見はもっと蓄積されていたことでしょう。もしかしたら,
人間は銀河系の外まで有人探査をしているかもしれませんし,クラゲの代謝活動
の応用で寿命が500年まで延びているかもしれません。しかし,これは人間性
の現状から眼をそらせて,描いた寓話ですね。
 人間は非常に多くのエネルギーを負の方向に使用し,社会を維持してきました。
一見無駄というものがなければ,人間社会の平和はむづかしいものであるようで
す。私は,あえて負の方向と書きましたが,自然科学の狭い観点からはそうでしょ
うが,人間社会からすると不可欠な正の方向です。そこで,クラゲが「癒し」と
しての役割をもっているので,自然科学に携わっている私は少なくともありがち
な誤解を少なくする努力をすべきでしょう。



「もしも○○○がとれちゃったら」 すえそーさん(1999.11.24)


もしも生殖器が取り外しが出来て、しかもそいつが勝手に動き回
ったらどうなるんでしょうね?本棚の後ろに紛れ込んで動けなく
なったり、ストーブの上にのって火傷したり、掃除機に吸い込ま
れたり、洗濯物に紛れ込んでベランダで干されたり、あるいは勝
手に外出してそこらじゅうで子孫を増やすなんて……
・・・中略・・・
が出来るんですよ。だからポリプは無限の寿命を持ってるんだと
言えますね、そんでもって子孫を残すのは生き物にとってそれは
それは大変だから、「泳ぐ生殖体」を別に作って効率よくやって
るわけです。

※「泳ぐ生殖体」、エッセイNo,25[エフィラ Water Cosmos]
 三宅裕志氏作より引用



「ミズクラゲと泡」 あん(2000.1.13)

 現在,ミズクラゲ一年間以上100個体ほど飼育中です。私の飼育水槽は
非常に簡単で,直径が1.5m位の円形水槽に1mほど海水を入れ,中央部でガ
ラス管から通気してます。これの主目的はクラゲの懸濁です。しかし,こ
れだとボコボコの泡がミズクラゲの生殖腺下腔に入り,ひどいときはクラ
ゲが水面に4個の一円玉ほどの泡が入って,クラゲは遊泳不能になって,
水面から潜れなくなります。そんなクラゲが毎朝5個体ほど水面でもだえ
ています。この一年の私の毎朝の日課はこの泡だしです。クラゲを指など
で転がして反転させ,泡を出してやるのです。殆どの泡が出ます。
 水槽内で水流を造るための泡を閉鎖系にしてやれば,問題解決なのです
が,どうやら私はサディストなのか,クラゲをいたぶりつづけています。
しかし,これで結構面白い発見もあるのです。水質が悪化して,クラゲに
元気がなくなったときなどに,泡が入りやすいようなのです。元気なクラ
ゲは泡に抵抗性があるようです。泡が入るクラゲが増えてくると,飼育水
を交換することにしています。
 これは不精なクラゲ飼育人の言い訳でしょうか。こんな飼育が一年続い
ています。



「極個人的なクラゲ語集」           あん(2000.2.25)

クラゲ語なるものを,極個人的な気持ちで創作してみました。クラゲ語百
語を目標に今後作って参ります。皆さん,応援してください。「これがグー!
」と極個人的にうなずけたものは,文中に取り込ませていただきます。

6.さくらげ : サクラの花が咲く時期に出てくるクラゲの総称。(参考:
近年,さくらげ見がクラゲラーの間で春の行事化している。)
5.あんどん : ほとんど役に立たなく無用に見える存在。「安丼」とも
表し,その場しのぎの食べ物の総称でもある。 
4.オカサカサ: 温泉,銭湯も家庭湯も含む。体がお湯に浮かび,身も心
もクラゲと化すお風呂の総称。 

3.クラゲスト: クラゲラーと同義,(→クラゲラー)
2.クラゲラー: クラゲ愛好家,クラゲストと同義。(例1)「彼は押し
も押されもしないクラゲラーに成長したものだ。」(例2)「今年のミスタ
ー・クラゲラーはやっぱりあんどんさんかな?」
1.くらげる: 全身の力を抜くとともに,心の緊張を解き,リラックスす
ること。肉体的及び精神的に弛緩すること。(例1)「温泉でくらげるのが
一番だよ」 (例2)「疲れたので,ちょっとくらげてくら〜」



「春終盤 〜南風の吹く日〜」 あん(2000.5.26)

 今日は南風(はえ)の吹く日です。強風です。春終盤なので
しょうか。
 こんな日はクラゲの姿は見えません。じっと,海底で風波が治
るのを待っているのでしょうか。
 南風が吹くので,蒸し暑く,天気は下り坂です。私はこんな日
はかえって落ち着かないものです。沢山の小さな命の活発な営み
を私の肌が感じています。また,南から沢山の生物が押し寄せて
来ているようです。胸騒ぎがして,本当に落ち着けません。

   はるばると 海をゆすって
         草木をゆすって

      私の 心をゆすって 南風が吹いている