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先日、山口県流通企画課から、瀬戸内海沿岸で鑑別困難な交雑フグが複数確認されたので、中毒防止の観点から流通させないようにとの注意喚起がありました(2011年5月21日山口新聞掲載)。 トラフグ属には約25種が知られており、下関近辺の市場に出回るのは、トラフグ、マフグ、ヒガンフグなど10種程度です。美味で知られる高級食材ですが、皮や肝臓、卵巣などに致死量を超える毒性物質テトロドトキシンが含まれていることも有名で、調理には専門の技術と免許が必要です。 食用となる可食部は種類によって異なり、トラフグは肉、皮、精巣を食用にできますが、マフグは皮と精巣には毒性があり肉しか食べられません。雑種については今のところ、外見だけで種の由来を判別することが困難、有毒部位が異なるフグ同士の雑種では、有毒部位の特定も困難になる可能性があります。 雑種と思われるフグは、国の決まりでは、とりあえずは特定された両親種ともに可食の部分は食べてよいことになっていますが、現在のところ水揚げや流通の現場で簡便に両親種を調べる手だてがありません。 水産大学校では、遺伝マーカーに基づいたトラフグ属の種と雑種の鑑別の研究を行っています。今までのところ、様々な組合せの雑種が見つかっていますが、なかでも山口県から発表されたトラフグとマフグの雑種は比較的多いようです。しかし、全体としてはたいへん複雑な様相を呈しており、交雑の全貌が明らかになるには今少し時間がかかりそうです。 雑種フグが漁獲された場合、流通できないので漁業者さんはそれを捨ててしまうことが多いようです。もちろん、危険なものを流通させないという意味で、それはそれで良いことですが、一方で、それはトラフグやマフグの純枠種を選んで水揚げし、雑種を放流することになります。すなわち海のなかに雑種を増やすことに他ならないわけです。漁業者の皆さんには、ぜひ放流せずに水揚げして、私たちに研究材料としてご提供していただけることをお願いいたします。もちろん、釣人も含めて食べることはもってのほかです。 本校としては、さらに簡便な雑種鑑別方法の開発ができればと考えています。また、模様など外見の特徴から一般の人でもわかる判別方法の指標をつくることも目指しています。もし雑種フグらしきものが獲れましたら、雑種鑑別研究の発展のため、水産大学校生物生産学科の酒井治己教授にご連絡くだされば幸いです。 連絡先:(代表)083-286-5111 |
2011/06/17 登録 |
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