生物生産学科 阿部 真比古准教授が第2回日本藻類学会和文誌論文賞を受賞しました。

 日本藻類学会和文誌「藻類」第73巻1号に掲載された以下の論文が、第2回日本藻類学会和文誌論文賞を受賞しました。授賞式は、日本藻類学会第50回大会(筑波大学)期間中の2026年3月21日に執り行われました。

 本論文は、本校生物生産学科 生物環境学講座 藻場生態系保全研究室での複数年にわたる卒論研究をとりまとめたもので、共著者には卒業生も含まれています。

 

賞状を持つ生物生産学科 阿部真比古准教授の写真

受賞論文

阿部真比古,越智友哉,藤井香帆,中島健大朗,持留幸紀,村瀬 昇. スサビノリ葉体の色調および光合成活性に及ぼす強光と紫外線の影響. 藻類,73,1-13,(2025)

論文の概要

 ノリ養殖は日本の海面養殖において、非常に大きな産業のひとつです。しかし、近年の海水温の上昇や海域の貧栄養化に伴い、その生産量は減少しています。ノリの品質を評価する基準のひとつに“色調”があります。色調は、ノリが持つ光合成色素の量と比率によって決まり、黒いほど品質が良いとされます。一方、海域が貧栄養化すると、光合成色素の合成ができなくなり、ノリ葉体が薄茶色のように退色していく“色落ち”が起こります。

 これまでにノリの色調に関する研究は、室内培養試験や野外養殖試験などが多く行われており、“ノリの色調は栄養環境や品種が大きく影響する”とされてきました。しかし、野外で養殖したノリの色調は、室内での培養では再現することができない、という課題もありました。

 そこで,我々は太陽光下で行われる養殖と,蛍光灯が用いられる室内培養の光環境の違いに着目し、人工太陽照明装置を用いた室内培養実験を行いました。その結果、ノリの色調は、紫外線が含まれる強光下では、ノリ葉体が持つ光合成色素やマイコスポリン様アミノ酸(*1)の量を変化させていることが明らかとなりました。このような変化は室内培養のような光環境下では起こりませんでした。また、紫外線が含まれる強光下では、栄養塩が十分に存在する室内培養であっても、野外養殖したノリの色調に近づくことも明らかになりました。さらに、光合成活性の変化から、光合成色素やマイコスポリン様アミノ酸の量の変化は強光や紫外線によって引き起こされる酸化ストレス障害(*2)を回避するための反応であることも示唆されました。

今後の展望

 ノリ養殖は、海藻養殖の中でも技術的に確立されていると言えます。また、これまでの養殖生産では、光は十分に当たる方が良いと考えられてきました。しかし、本研究によって、栄養塩が存在したとしても、十分な光が産業的には不都合になる場合があることが示されました。ノリ養殖において、色調は単価に大きく影響します。ノリの“色落ち”は栄養塩環境が関係することは間違いありませんが、光環境によって色落ちを起こり難くさせたり、色調の回復を早めさせることも可能かもしれません。

語句説明

*1 マイコスポリン様アミノ酸:ノリ葉体に含まれる物質。紫外線防御や抗酸化作用などが認められている。

*2 酸化ストレス障害:活性酸素種が過剰に生産されることにより引き起こされる障害。細胞内の脂質やタンパク質などにダメージを与え,生長や生理機能なども阻害する場合がある。

 

※本論文は,下記URLから閲覧可能です。
http://sourui.org/publications/sorui/list/Sourui_PDF/73(1)_1.pdf

※関連資料
おさかな瓦版 No.105 (2022.1)
https://www.fra.go.jp/home/kenkyushokai/book/kawaraban/files/no105.pdf

 

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